大手企業だけじゃない!
ランサムウェア被害の“連鎖”と取引先リスクとは
目次
前回の記事では、アスクルやアサヒビールといった大手企業が受けたランサムウェア被害の事例を紹介しました。これらの事例は、単に大企業だけの問題ではなく、取引先や委託先を通じて中小企業にも影響が及ぶ「サプライチェーンリスク」を示しています。
今回は、その続編として、中小企業が押さえておくべき「取引先リスク」に焦点を当て、日常の業務にすぐ役立つ対策を整理します。
サプライチェーン攻撃とは?
サプライチェーン攻撃とは、ある企業を直接狙うのではなく、その企業の取引先・システムベンダー・物流会社・ソフトウェア提供元などを経由して攻撃を行う手法です。
攻撃者が「弱いリンク」を狙い、そこから本命企業へ侵入するという設計です。
たとえば、ソフトウェア一部のアップデートにウィルスを潜ませて配布、あるいは物流・配送業者の管理システムに侵入、そこを起点に複数企業へ広がった、という事例が確認されています。
なぜサプライチェーンが狙われるのか?
- 取引先・ベンダーのセキュリティ体制が、大企業ほど強固でないケースが多い。
- 大企業との接点(システム連携・データ共有等)を通じて、複数企業へ一気に広がる可能性がある。
- 攻撃者にとって“1つ突破すれば複数社に波及”という効率性がある。
「大手企業の被害」が中小企業にも波及する仕組み
先日、アスクルでもランサムウエア感染が報告され、サプライチェーンの攻撃であることが発表されました。
これにあるように、ある大手物流企業・EC企業がシステム停止に陥った場合、その企業と取引・連携している中小の事業者も「影響を受けるケース」が増えています。具体的には以下のようなパターンです。
- 受発注データの連携停止
大手企業が業務停止やシステム遮断を行うと、受発注データの送受信ができなくなり、中小企業の出荷・納品・請求業務が滞ります。 - 物流・配送サプライチェーンの遮断
配送システム・倉庫管理システムが攻撃を受けると、荷物出荷・入荷に遅れが出て、製品の供給が止まることがあります。 - システムの信用リスク・取引停止
大手取引先が被害を受けたことで、取引条件の見直し/セキュリティ要求の強化が起き、中小企業にとって作業負荷・コスト増となる可能性があります。 - データ流出による連帯責任
ベンダー経由で顧客・従業員データが漏えいした際、取引先にも情報提供・影響確認が発生し、中小企業の reputational(信用) にも響くケースがあります。
これらは「自社が直接攻撃されたわけではないが、被害の“波”に巻き込まれる」という構図です。
中小企業も注意すべき「取引先リスク」
このようにランサムウェアやサイバー攻撃は、大企業だけの問題ではありません。中小企業でも、取引先や委託先が被害を受けることで、自社の業務に影響が出ることがあります。特にWeb制作や受発注システムを扱う企業では、取引先の安全性を意識することが重要です。
確認しておきたいポイント
取引先の安全性を簡単にチェックするには、次の点を確認しましょう。
- 契約書に「サイバー被害時の通知義務」があるか
- 多要素認証(MFA)やアクセス権管理、ログ管理がされているか
- 定期的な脆弱性診断や災害復旧計画(BCP)があるか
- 自社がどのくらいその取引先に依存しているか把握しているか
自社でできる準備
取引先リスクを減らすために、以下を意識しましょう。
- 取引先リストを整理して、停止した場合の影響を考える
- 受発注・物流・データ連携の最低限の業務を、自社だけで続けられる体制を作る
- 契約時にセキュリティ条項を盛り込む
- 委託先のアクセス権やアカウント管理を明確化
- 社内で取引先のリスク情報を共有し、注意喚起をする
まとめ
サプライチェーン攻撃の増加で、一社の被害が連鎖的に広がる時代です。
中小企業も、自社だけでなく取引先の安全を意識することが重要です。
これを機に、取引先との契約・アクセス管理・データ連携に注意し、最悪の場合でも業務が止まらない体制を作りましょう。
「自社+取引先」の視点で守る、この考えがマルウェアから身を守るポイントになります。