「伝えた」のに「伝わらない」のはなぜ?
Webサイトで伝わる言葉をつくる3つの視点
目次
「何を書けばいいかわからない」「情報はあるのに、言葉にならない」
Webサイトの制作やリニューアルに関わっていると、こういった悩みを耳にすることがよくあります。私自身も、クライアントのサイト制作に携わる中で何度も同じ壁にぶつかってきました。
じつは、「誰に」「何を」「どう伝えるか」この3つを整理するだけで、伝わる言葉は自然と生まれてきます。今回は、Webサイトのライティングで意識したいポイントを、ページごとの具体的な考え方とあわせてまとめてみました。
「伝える」と「伝わる」のたった1文字の違い
「伝える」と「伝わる」。たった1文字の違いですが、コミュニケーションにおいては大きな意味の差があります。
「伝える」は発信者側の行為です。一方「伝わる」は、受け手が理解し、共感して初めて成立します。どれだけ丁寧に情報を書いても、相手の心に残らなければ「伝わった」とは言えません。
| 伝える | 伝わる | |
|---|---|---|
| 主体 | 発信者 | 受信者 |
| 視点 | 自分目線 | 相手目線 |
| ゴール | 情報を出す | 相手に届く・動いてもらう |
Webサイトは、不特定多数の「見えない誰か」に向けて言葉を発信する場です。読んでいる人が誰で、どんな状況で、何を知りたくてページを開いているのかを想像しながら言葉を選ぶことが、「伝わる」ライティングの出発点です。
伝わる言葉をつくる3つの視点
① 誰に
「誰に向けて書くか」が決まっていないと、どれだけ丁寧に書いても誰にも刺さらない文章になります。ターゲットによって、言葉のトーンも情報量も、伝えるべき内容もすべて変わってくるからです。
この「誰に」を具体化するために役立つのが、ペルソナ設計とカスタマージャーニー設計の2つです。
ペルソナ設計は、サイトを訪れるユーザーの中から「典型的な1人」をモデル化する手法です。年齢・職業・ライフスタイルだけでなく、「なぜその行動をとるのか」「どんな不安や動機があるのか」まで踏み込んで設定することで、書くべき言葉と省くべき情報が見えてきます。
カスタマージャーニー設計は、そのペルソナがサイトにたどり着き、行動に移すまでの思考や行動の流れを可視化する手法です。「ペルソナが人物像」だとすれば、「カスタマージャーニーはその人物がたどる道筋」です。どのタイミングで何を伝えるべきかが整理でき、コンテンツ全体に一貫性が生まれます。
チェックポイント:ペルソナやカスタマージャーニーを設計せずにライティングを始めると、「誰にも響かない文章」になりがちです。書き始める前に、まず読者像を固めましょう。
② 何を
サイト全体でどんな印象やメッセージを伝えたいかを決めたうえで、各ページごとに伝えるべき内容を設計します。そのとき意識したいのが、価値(Value)・特徴(Feature)・ベネフィット(Benefit)の3つの観点です。
- 価値(Value): このサービスや会社を利用することで、ユーザーの課題がどう解決されるか
- 特徴(Feature): 他と比べて何が違うのか、どんな機能や仕組みがあるのか
- ベネフィット(Benefit): その特徴があることで、ユーザーにどんなメリットや変化がもたらされるのか
この3つを混在させるのではなく、「ペルソナにとってどの切り口が一番響くか」を考えて情報の焦点を絞ることが大切です。
また、競合との差別化を考えるときは、スペックや機能の比較だけでは不十分です。「なぜこのサービスをやっているのか」「何にこだわっているのか」という背景や哲学を言葉にすることが、真の差別化につながります。
③ どう
同じ内容でも、「どう伝えるか」によって受け取られ方は大きく変わります。以下の4点を意識すると、伝わりやすさが格段に上がります。
- 結論を先に出す: 大切な情報から伝える「結論先出し」で、読み手の離脱を防ぐ
- トーンを統一する: ターゲットに合わせた口調(丁寧/カジュアル/専門的など)を一貫させる
- 視覚要素と連携する: 情報が複雑なときは図解やアイコンを活用して理解を助ける
- 第三者視点でチェックする: 書いた文章を一度寝かせて見直したり、他の人に読んでもらうことで「本当に伝わるか」を確認する
ページ別:伝わる言葉のつくり方
トップページ:第一印象を決めるキャッチコピー
ファーストビューのキャッチコピーは、ユーザーの第一印象を決定づけます。ただし、サイトの種類によって求められる言葉の方向性は異なります。
| サイト種別 | キャッチコピーの方向性 |
|---|---|
| サービスサイト | 課題と解決策をセットにした、ベネフィットが明確な言葉 |
| コーポレートサイト | ビジョンや存在意義、社会への姿勢を象徴する言葉 |
| 採用サイト | 「入ったらどんな自分になれるか」希望と成長をイメージできる言葉 |
| メディアサイト | 必要な情報にすぐアクセスできる構成と、わかりやすい見出し |
重要なのは「そのサイトは何のためにあるのか」「誰にどんな行動を促したいのか」を丁寧に見極めること。そのうえでキャッチコピーの有無や構成を判断することが、訪問者に届く言葉づくりにつながります。
事業・サービス紹介:ベネフィットが伝わる言葉選び
事業やサービスの紹介ページでは、機能や特徴を並べるだけでは不十分です。「自分にとって本当に必要なものかどうか」をユーザーが判断できるように、ベネフィットまで踏み込んで言葉にすることが大切です。
たとえば、こんな書き換えが有効です。
- Before: 「地域向け情報発信を行っています」
- After: 「地域の人が必要な情報をすぐに見つけられる環境を整えています」
「何をしているか」ではなく「それによって何が変わるか」を主軸に置くだけで、読み手への響き方は大きく変わります。また、類似サービスが多い領域ほど、「なぜこの事業をやっているのか」という思想や姿勢を言葉にすることが差別化の鍵になります。
企業紹介:「らしさ」が伝わるストーリーと表現
会社情報のページは、企業の信頼性や人間味を伝える場所です。「この会社から依頼したい」「一緒に働きたい」と思ってもらうには、理念・姿勢・歴史・想いが丁寧に語られている必要があります。
意識したい3つのポイントはこちらです。
企業理念やビジョンを言語化する: 「なぜそれを掲げているのか」という背景も含めて語ることで、単なるスローガンを超えた共感が生まれます。
代表者の言葉に人間性を込める: 形式的な代表メッセージではなく、「どんな想いでこの会社をつくったのか」「どんな社会的役割を果たしたいのか」という個人的な語り口が、文章に温度を生み出します。
数字にストーリーを添える: 「30名の少数精鋭体制で」「地域密着で10年以上」など、創業年や社員数といった客観情報に一言の補足を添えるだけで、その数字の意味が伝わりやすくなります。
採用・社員紹介:想いが伝わる言葉の設計
採用ページで大切なのは、求職者が「自分がここで働く姿」をイメージできるかどうかです。抽象的な理想像ではなく、日常や価値観を具体的な言葉で描き出すことが求められます。
- Before: 「風通しの良い職場です」
- After: 「週1回の全社会議で、年次関係なく意見を出し合う文化があります」
社員インタビューでも同様です。「入社前は○○が不安だった」「今は○○にやりがいを感じている」といった個人のストーリーが見える言葉が、求職者との距離を縮めます。「どんな環境か」ではなく「そこでどんな人がどう感じながら働いているか」を言葉の温度で伝えることが、採用ライティングの核心です。
まとめ:「どう伝えるか」より「どう伝わるか」を考える
今回ご紹介した内容をまとめます。
- 「伝える」と「伝わる」は違う。受け手が理解・共感して初めて伝わったといえる
- 「誰に」を明確にするために、ペルソナとカスタマージャーニーを設計する
- 「何を」は価値・特徴・ベネフィットの3観点で整理し、差別化の背景まで言葉にする
- 「どう」は結論先出し・トーン統一・視覚要素との連携・第三者チェックで磨く
- ページ別に「そのページで何を伝えるか」の役割を明確にしてから書き始める
Webサイトはビジネスの「最初の顔」です。ただ情報を並べるのではなく、読んだ人の行動や感情を動かす言葉を積み重ねることが、サイト全体の価値につながっていきます。